2007年8月28日火曜日

『NANA2』 ~愛・友・夢が混ざった充実の展開~

総合71点/100点
(ストーリー:内容;18点/30点
       一貫性;15点/20点
       展開;20点/20点
主張:7点/10点
描写:4点/10点
演技:7点/10点)

 2005年9月に公開された『NANA』の続編であり完結編。前作とは大きくキャストが異なった作品であるが、内容は前作の続きである。
続編にもかかわらず、キャスト(しかも主役や準主役まで)の大幅変更というのは、大人の事情を考慮したとしてもやはり頂けない。宮崎あおいは演技 がイマイチながらも表情豊かな表現で恋多き乙女の味を出していたのだが、市川由衣は乙女の弱さを表現するハマリ方がいまひとつ。その他にも主人公ナナの恋 人でありライバルバンドのベース担当の本城蓮や、ブラストのメンバー、シンも異なる俳優が演じている。これでは続編として見る際に戸惑いを覚えてしまう。
しかし、キャストは大きく変更したが雰囲気は全く変わらないのがすごい。普通これだけ大きくキャストを変更したら、もっと作品自体が壊れそうな ものなのに、雰囲気は前作同様に描写されているため、充分続編ということで見ることができる。作品の一貫性での減点はないに等しい。それに加え、(感銘を 受けるシーンがないことはさておき)前回よりもさらに面白いストーリー内容である。愛情・友情・夢をテーマにし、それぞれが交錯しながらもしっかりと起承 転結はつけており、ストーリー展開も終始ハラハラの連続で見ている側を飽きさせない。恋の病や友情の崩壊や夢への挫折なんていう、ありふれたストーリーの 中にも、様々な展開を見せそれが効果的にきいているから面白い。少女漫画とは思えないSEX描写がされることも、作品全体をリアルに見せている訳なのだ が、これについては前作中島美嘉が見せたような場面がなかったのが物足りなく、少しリアルさを欠いてしまっている。夢の内容である音楽についても作品をと ぎれさせず、壊すことなく効果的に取り込んでいるのが相変わらず素晴らしかった。市川由衣の演技の下手さや、所々に見られる粗のある描写、感動部分や SEX描写がないことにも、この作品展開があれば目をつむって映画を楽しめることだろう。
もし前作同様のキャストでこれを行えば、続編としてより一層入り込むことができたであろうに。それだけに惜しい一作である。そしてもう少ししっかりと粗をとって芸術性をおりこみ感動作品に繋げれば邦画界の大バケ作品になったに違いない。

2007年8月26日日曜日

大日本人 ~松本人志のお笑い魂~

総合33点/100点
(ストーリー:内容;9点/30点
       一貫性;4点/20点
       展開;4点/20点
主張:10点/10点
描写:3点/10点
演技:3点/10点)

ご存知お笑い会のカリスマ:松本人志の初監督作品として期待の高いこの作品。私の少年時代に大きな影響を与えてくれたのがダウンタウンで、自分に 明るさを教えてくれたのは彼らであった。番組は欠かさず見ることはもちろん、初めて買ったCDも『Wow Wow Tonight』で、中学2年の頃の読書感想文には『遺書』を書いたのも覚えている。それだけにこの作品は非常に楽しみにしていた・・・のだが、いざ評論 を書こうとするとものすごく評価がしづらい作品であった。それは私情も入ってしまうからなのであろうが・・・。
たぶんきっと映画評論家の中でこの作品を絶賛する人はいないだろう。そしてこの作品が何かの賞を取ったり、映画として名高い評価を得ることもな いはずである。私自身の評価としても、主張を除いた全項目においてかなり厳しい採点をした。何故なら「ただ、何の考えもなしに」映画としてだけ見るとつま らないからである。コメディなんだったらもっともっと笑いの要素を入れて欲しいだろうし、前半部分はゆったりとした展開の上見所もない。「オッ」と見張る 部分があっても単発。後半部分は今まで綺麗に描いていた世界をぶち壊すような描写で、それがエンディングまでだらだら続く。ましにはなったが松本人志自身 の演技もやっぱりイマイチ。
と、いう評価をするのがおそらく正しいのだろうが、実は私自身はとっても満足している作品だ。皆様にもこの映画の中に組み込まれた意志を是非感 じ取って本作品を見て欲しい。その意志とは、「松本人志のお笑いへの魂」である。松本監督は、今現在普通には表現できない笑いがあるから映画でそれを表現 したかったのである。
何故お笑いだけ自由に表現できないのだろう。ヒーロー戦隊が5人で怪獣1匹を退治するのは許されて、芸人が芸人をいじめるのはダメというのは何 故だろう。下ネタは子供の教育に良くないとの批判がある。老人がボケたことを笑いに変えたり、人の死を使った笑いなんかも非難を浴びる。でも、笑いとは知 らない間に人々を豊かにするものであり、たとえそれを誰かに分かってもらえなくても、俺はそれをやりたいんだ。実際にホラ、おもろいやろ?
というのが松本監督の考えである。それがこの映画『大日本人』に込められた想いであり、劇中にもゲームをやる子供を例えて述べられている。映画としてこの作品を見る方も、ただ批判するだけでなく、松本監督の想いを是非とも組み込んで見て欲しい。
映画会場が爆笑に包まれた時、私は別の意味で涙が出そうになりました。