デモテープ収録の日がやってきた。会場は陽介とバンドを組んでいた時に良く使っていた『スタジオM』を利用した。まずは録音の前に何度か合わせてみる。
『SayTheWord』の出だしは前奏から始まる。とは言ってもアカペラなので前奏ももちろん「声」である。種哉の高音域を活かし、最初から声を張るアレンジで、決まればインパクトのある仕上がりになる。
・・・・・・
「ストップストップ!」
その曲のツカミである部分が終わった所で陽介がとめた。そして一言。
「いいぞ!!」
不安を抱えたままの収録であったが、最後の練習の時より格段に良くなっていた。それは、陽介だけでなく、演奏をしているメンバー全員が感じていた。つい昨日までは聞かせられるものではなかったものが急に良くなった理由は・・・
「ベースがいい!」
陽介の言うように、俺もそう思った。ウッズの音がしっかりとコーラスを支え、リズムもピッタリと合うようになっていたのである。その名の通りベースがしっかりするだけでこんなにもアカペラは違うのかと思った。
1曲演奏を終えてみても先日までのウッズとは別人のように上手くなっていた。当然、曲自体の完成度も上がる。
「まぁ、しっかりパートを覚えてきたからね・・・。」
と、ウッズは得意気に低い声で言った。
もともと低音に向いていた彼であったが、持っていたポテンシャルが開花し回数を重ねるにつれても上手くなっている。バンドでドラムとベースがコンビなように、アカペラでもボイパとベースはコンビである。歌っている最中、俺のボイパと重なる感じがたまらなく気持ち良かった。
だが、問題はやはり熊毛であった。オペラ声も、前奏やサビのように声を張って歌う時にはさほど気にならないが、メロディー部分に関しては一人だけ浮いて聞こえてしまう。そう、良くなったとは言え、まだまだ課題はあった。そして、それはすぐに解決できる事でもなかった。
もう時間がない・・・。俺達は収録に移るしか手段がなかった。
デモテープ収録は、一斉に歌うのでなく、一人ずつ各自のパートを収録し、後で合わせるという方法で行った。これはプロも使っている方法で、その方が音が綺麗に撮れる上、声の大きさを整える事もできる。要は、その方が”上手く”聞こえるのだ。こういったスタジオで、しかも一人ずつ歌うのには慣れていなかった為、何回も撮り直しながら進んだが、何とか全員のパートを収録する事ができた。そして、それを合わせて聞いてみる。
・・・・・・・・
・・・・・・・・
声の大きさを調節したり、綺麗に聞こえるエフェクトをかけたりしてごまかしてはいるが・・・。
やはり選考通過の期待が出来るものではなかった。上手くなったとは言え、それは「前に比べて」というだけのことである。歌いながら良くないと思った部分は、テープに撮ると一層目立つ。
「でも、何はともあれ第1次選考に間に合う事が出来たんだ。本番までにもっと練習するしかないよ。」
リーダー種哉はそう言って、テープを握り締めた。
「本番までに、しっかりやれば大丈夫だって。」
陽介は無言の熊毛の肩を叩いてそう言った。
「でも、本番の前に・・・」
俺はそう言いかけて止めた。
この時俺は、結成1ヶ月のグループがいきなり出演なんてやっぱり難しかったんだなぁと思ってしまった。いや、そう思ったのは俺だけじゃなかったかもしれない。俺の言いかけた言葉に、誰も反応しなかったのだから・・・。
もっともっと練習して、成長してから再度挑戦しよう。きっとまた来年があるだろう・・・。メンバー全員がそう思っていたに違いない。今までソングスピットとして「ハモリ倶楽部出場」を掲げ練習をしてきただけに、一気にモチベーションが下がってしまった・・・。
そう、そんな風に、俺はこの時思ってしまっていたのである・・・。
その数日後、種哉から1本の電話が入るまでは。
2007年3月18日日曜日
2007年3月4日日曜日
俺とアカペラ 第5章 ~苦戦~
初めての集いから2週間後、結成直後の俺の希望は、不安に変わっていた。
「このままじゃぁ、まずいな。」
チームで一番ハモリのセンスがある陽介が言った。
「間に合うかな・・・デモテープ?」
「やるしかない。とにかく集中してまずは個人がしっかりパートを覚えよう!」
リーダー種哉の一言で俺達は練習を再開し始めた。
俺達ソングスピットは、『ハモリ倶楽部出場』という目標に向けて本格的に練習を始めていた。
出場に向けての関門は2ステップ。まずは「デモテープ選考」、それが通れば全国8箇所で実施される「面接」である。しかし、選考回数とは逆にその通り門は非常に狭い。全国から約2000組の応募がなされ、そこから面接まで行ける組がその10分の1の200組。さらに面接を通過できるのはわずか56組(7組×8箇所)である。俺達が出場を狙う東海地区予選。わずか7組の枠に、結成して間もないアカペラグループが挑むのである。
まずはその第1ステップ、デモテープをテレビ局に送らねばならない。それを形にする為に今、課題曲『Say The Word』を練習をしてるのであった。
しかし・・・。俺の当初の思惑とは裏腹に、そう簡単に演奏が上手くいくものではなかった。
「ハモる」という事は、人と人との声の混ざりにより綺麗に聞こえるものである。その声の混ざりが、どうにも上手くいかなかったのだ。原因は、コーラスパートを担当している熊毛の、「オペラ声」であった。
「普通の人は、”地声”と、”裏声”があるけど、熊毛は、その上に”オペラ”が存在する。」
ハモリの達人陽介は、そう指摘した。
オペラのように高音域を大きな声量で出せるセンス。それは、オペラの時に使われる声質で、普通の人では簡単には出せないものなのだが・・・。
熊毛にあった長所が、ハモリに関しては裏目に出てしまっていた。
もう一つの問題点があった。それは、ウッズの「ベース」である。それは、ベースのパートが初心者には非常に難しいパートだからである。メインヴァーカル、コーラスとは全く違ったリズム、音を出す、「ベース。」そして難しいパートの上、コーラスの基本(”ベース”)となる音を出す大切なパート。自分の音を覚えるのがやっとで、皆と合わせるまでに時間がかかってしまったのだ。
逆に良かったのは、種哉のメインヴォーカル。男性が女性曲を原キーで歌えるその歌唱力は、何度聞いてもすごかった。そして、陽介のハモリセンス。小学生の時から培った彼の能力・音感はすごかった。高校の頃一緒にバンドをやっていた頃より、アカペラになるとさらにそれが際立って見えた。自慢する訳ではないけれど、俺のボイパも形になっている。
デモテープの〆切は、来週。このままでは・・・間に合わない・・・。
「とにかく、熊毛は裏声を出せるようになる事。ウッズは、もう少しちゃんと音を覚えてこよう!」
陽介は言った。
間に合わない・・・と言っても、何とか形にして、送らねばならない。
俺達は、不安を抱えたまま、デモテープの収録を迎えることとなってしまった。
「このままじゃぁ、まずいな。」
チームで一番ハモリのセンスがある陽介が言った。
「間に合うかな・・・デモテープ?」
「やるしかない。とにかく集中してまずは個人がしっかりパートを覚えよう!」
リーダー種哉の一言で俺達は練習を再開し始めた。
俺達ソングスピットは、『ハモリ倶楽部出場』という目標に向けて本格的に練習を始めていた。
出場に向けての関門は2ステップ。まずは「デモテープ選考」、それが通れば全国8箇所で実施される「面接」である。しかし、選考回数とは逆にその通り門は非常に狭い。全国から約2000組の応募がなされ、そこから面接まで行ける組がその10分の1の200組。さらに面接を通過できるのはわずか56組(7組×8箇所)である。俺達が出場を狙う東海地区予選。わずか7組の枠に、結成して間もないアカペラグループが挑むのである。
まずはその第1ステップ、デモテープをテレビ局に送らねばならない。それを形にする為に今、課題曲『Say The Word』を練習をしてるのであった。
しかし・・・。俺の当初の思惑とは裏腹に、そう簡単に演奏が上手くいくものではなかった。
「ハモる」という事は、人と人との声の混ざりにより綺麗に聞こえるものである。その声の混ざりが、どうにも上手くいかなかったのだ。原因は、コーラスパートを担当している熊毛の、「オペラ声」であった。
「普通の人は、”地声”と、”裏声”があるけど、熊毛は、その上に”オペラ”が存在する。」
ハモリの達人陽介は、そう指摘した。
オペラのように高音域を大きな声量で出せるセンス。それは、オペラの時に使われる声質で、普通の人では簡単には出せないものなのだが・・・。
熊毛にあった長所が、ハモリに関しては裏目に出てしまっていた。
もう一つの問題点があった。それは、ウッズの「ベース」である。それは、ベースのパートが初心者には非常に難しいパートだからである。メインヴァーカル、コーラスとは全く違ったリズム、音を出す、「ベース。」そして難しいパートの上、コーラスの基本(”ベース”)となる音を出す大切なパート。自分の音を覚えるのがやっとで、皆と合わせるまでに時間がかかってしまったのだ。
逆に良かったのは、種哉のメインヴォーカル。男性が女性曲を原キーで歌えるその歌唱力は、何度聞いてもすごかった。そして、陽介のハモリセンス。小学生の時から培った彼の能力・音感はすごかった。高校の頃一緒にバンドをやっていた頃より、アカペラになるとさらにそれが際立って見えた。自慢する訳ではないけれど、俺のボイパも形になっている。
デモテープの〆切は、来週。このままでは・・・間に合わない・・・。
「とにかく、熊毛は裏声を出せるようになる事。ウッズは、もう少しちゃんと音を覚えてこよう!」
陽介は言った。
間に合わない・・・と言っても、何とか形にして、送らねばならない。
俺達は、不安を抱えたまま、デモテープの収録を迎えることとなってしまった。
2007年2月24日土曜日
俺とアカペラ 第4章 ~歌串~
『SongSpit』初めての集い。
そう。このSongSpitというグループ名は、この第1回の練習の時に種哉の提案で決まった。
名前の由来はメンバーの頭文字を繫げ、それを英語にしたというもの。つまり、ウッズの『ウ』、種哉の『タ』、陽介:本名野上陽介の『ノ』、熊毛の『ク』、そして俺の『シ』を繫げると『ウタノクシ』。=『歌串』。=『SongSpit』。という事らしい。
彼の練りに練った考えを認め、賛同した者半数、そうではなくてもソングスピットという響きが良いとして、結局この名前に即決した。
それと同時に、SongSpitの創始者である種哉がこのアカペラバンドのリーダーを務めるということも決まった。
名前を決めたという事もそうだが、創始者とは種哉が最初に
「『ハモリ倶楽部』出場を目指そう!」
と言い出して人を集め始めたという意味が大きい。
そしてSongSpitが初めて練習に取り掛かる曲、つまりは『ハモリ倶楽部』出場の為の課題曲、これもまたリーダー種哉の提案で決まった。いや、この場合は、リードヴォーカルを務める種哉の提案という方がいいだろう。
アカペラには、メインヴォーカルであるリードが1人、一番低いパートのベースが1人、ボイパが1人、残るはコーラスというのが基本的な構成だ。リード担当の種哉が自ら選んだ曲が最も種哉の声を活かせる曲であり、良いと判断をしたのである。
しかし、その曲は安室奈美恵の『SayTheWord』。女性・・・の曲だ。男性が、女性の曲を歌う。しかも原キーで歌うと言うのだ・・・。俺も高校時代ヴォーカルをやっていたけど、とても声が出ない。これを歌いたいと自信満々に言う奴が、信じられなかった。そう、彼の声を聞くまでは。
この日、俺は初めて種哉の声を聞いた。正直、驚きの一言だった。
「こんな高い声が出るなんて。」
課題曲の『SayTheWord』。女性の曲であるこの歌を、声をかすれさせる事なく、そして何といっても裏声を使う事なく、彼は歌いきった。
ハイトーンを越えていると思った。男の声を越えた声だと思った。
これに陽介の絶対的ハモリセンスによるコーラス、それから熊毛の美声によるコーラス、そしてウッズのベースが加われば・・・。
陽介のメールからずっと持っていた俺の心の喜びは、『ハモリ倶楽部』出場への希望へと変わっていった。
そう。このSongSpitというグループ名は、この第1回の練習の時に種哉の提案で決まった。
名前の由来はメンバーの頭文字を繫げ、それを英語にしたというもの。つまり、ウッズの『ウ』、種哉の『タ』、陽介:本名野上陽介の『ノ』、熊毛の『ク』、そして俺の『シ』を繫げると『ウタノクシ』。=『歌串』。=『SongSpit』。という事らしい。
彼の練りに練った考えを認め、賛同した者半数、そうではなくてもソングスピットという響きが良いとして、結局この名前に即決した。
それと同時に、SongSpitの創始者である種哉がこのアカペラバンドのリーダーを務めるということも決まった。
名前を決めたという事もそうだが、創始者とは種哉が最初に
「『ハモリ倶楽部』出場を目指そう!」
と言い出して人を集め始めたという意味が大きい。
そしてSongSpitが初めて練習に取り掛かる曲、つまりは『ハモリ倶楽部』出場の為の課題曲、これもまたリーダー種哉の提案で決まった。いや、この場合は、リードヴォーカルを務める種哉の提案という方がいいだろう。
アカペラには、メインヴォーカルであるリードが1人、一番低いパートのベースが1人、ボイパが1人、残るはコーラスというのが基本的な構成だ。リード担当の種哉が自ら選んだ曲が最も種哉の声を活かせる曲であり、良いと判断をしたのである。
しかし、その曲は安室奈美恵の『SayTheWord』。女性・・・の曲だ。男性が、女性の曲を歌う。しかも原キーで歌うと言うのだ・・・。俺も高校時代ヴォーカルをやっていたけど、とても声が出ない。これを歌いたいと自信満々に言う奴が、信じられなかった。そう、彼の声を聞くまでは。
この日、俺は初めて種哉の声を聞いた。正直、驚きの一言だった。
「こんな高い声が出るなんて。」
課題曲の『SayTheWord』。女性の曲であるこの歌を、声をかすれさせる事なく、そして何といっても裏声を使う事なく、彼は歌いきった。
ハイトーンを越えていると思った。男の声を越えた声だと思った。
これに陽介の絶対的ハモリセンスによるコーラス、それから熊毛の美声によるコーラス、そしてウッズのベースが加われば・・・。
陽介のメールからずっと持っていた俺の心の喜びは、『ハモリ倶楽部』出場への希望へと変わっていった。
2007年2月20日火曜日
俺とアカペラ 第3章 ~誕生~
陽介からのメールは、これからは仲間と一緒にボイパができるという喜びを運んできた。
そして、これが俺のアカペラへの道が開ける最初の一歩であったのだ。
しかし陽介の言う、友達とは・・・?
メールの続きを細かく読んで見ると、そこには3人の名前が記されていた。
「熊毛(くまげ)」と「ウッズ」、そして「種哉(たねや)」である。
3人とも、俺と陽介の出身校である「一宮高校」の卒業生であった。
熊毛は、本名:熊毛良一。高校の頃、陽介と同じハンドボール部に所属していた体格の良い「歌好き」である。陽介と仲が良かった俺は、ハンドボール部の同年代は皆知っていて、話ももちろんした事があった。
ウッズとは、1年生の時同じクラス、つまりは俺と陽介のクラスメイトで、容姿があの有名なプロゴルファー「タイガー・ウッズ」に似ていることからあだ名として皆そう呼んでいる。言っておくが生粋の日本人で、本名は西洋のかけらもない:澤田義男という。
そして種哉、本名:綾瀬種哉もまた高校の同級生。だが、正直彼とはあまり面識がなく、体育の合同授業の時、少し話したくらいの関係だった。俺たちとは別のバンドを組んでいたらしく、彼はそこでヴォーカルをやっていた・・・らしい。そう、後に必要不可欠となるこいつの声を、この時の俺はまだ知らなかったのである。
熊毛、ウッズ、種哉、それに俺と陽介。 合わせて5人。
アカペラをやるのには充分な人数。
その5人が集まる最初の日がやってきた。
場所は、地元の公民館。俺は集合時間の少し前に来ていた。
そして、ワクワクと想像を膨らませていた。
陽介は、小学校の時からハモリの練習をしていて、バンドを組んでいた時もハモリに関して、音感に関して、俺もかなりの指導を受けた。ハモリはこれから俺たちが奏でるアカペラの根本。指導者として引っ張っていってくれるだろう。
ウッズ。その容姿と明るい性格でクラスでも人気者であった彼は、地声もやたらと低く、特徴的であった。アカペラにはベースという声の低さが求められるパートがある。
熊毛はあの後陽介から聞いた話だと、中学校の時、音楽の先生からオペラへの道を勧められた程、美声の持ち主らしい。高音域のパートを任せられるだろう。
そして、高校の時ヴォーカルをしていた種哉。
この5人が集まれば、すごいアカペラバンドが出来る!そんな構想が頭に産まれていた。
そしてついに、その5人が顔を合わせた。
「久しぶり!」
お互い皆、高校の同級生。高校の時親しかった人も、顔見知りだけであった人も、今ここに集った。
しかしここにいる全員が音楽が好きで、これからはアカペラをやるメンバー。
声だけで奏でる音楽:アカペラをやる仲間なのである。
俺とアカペラを繫ぐグループ『SongSpit』の初めての集い。
そして、これが俺のアカペラへの道が開ける最初の一歩であったのだ。
しかし陽介の言う、友達とは・・・?
メールの続きを細かく読んで見ると、そこには3人の名前が記されていた。
「熊毛(くまげ)」と「ウッズ」、そして「種哉(たねや)」である。
3人とも、俺と陽介の出身校である「一宮高校」の卒業生であった。
熊毛は、本名:熊毛良一。高校の頃、陽介と同じハンドボール部に所属していた体格の良い「歌好き」である。陽介と仲が良かった俺は、ハンドボール部の同年代は皆知っていて、話ももちろんした事があった。
ウッズとは、1年生の時同じクラス、つまりは俺と陽介のクラスメイトで、容姿があの有名なプロゴルファー「タイガー・ウッズ」に似ていることからあだ名として皆そう呼んでいる。言っておくが生粋の日本人で、本名は西洋のかけらもない:澤田義男という。
そして種哉、本名:綾瀬種哉もまた高校の同級生。だが、正直彼とはあまり面識がなく、体育の合同授業の時、少し話したくらいの関係だった。俺たちとは別のバンドを組んでいたらしく、彼はそこでヴォーカルをやっていた・・・らしい。そう、後に必要不可欠となるこいつの声を、この時の俺はまだ知らなかったのである。
熊毛、ウッズ、種哉、それに俺と陽介。 合わせて5人。
アカペラをやるのには充分な人数。
その5人が集まる最初の日がやってきた。
場所は、地元の公民館。俺は集合時間の少し前に来ていた。
そして、ワクワクと想像を膨らませていた。
陽介は、小学校の時からハモリの練習をしていて、バンドを組んでいた時もハモリに関して、音感に関して、俺もかなりの指導を受けた。ハモリはこれから俺たちが奏でるアカペラの根本。指導者として引っ張っていってくれるだろう。
ウッズ。その容姿と明るい性格でクラスでも人気者であった彼は、地声もやたらと低く、特徴的であった。アカペラにはベースという声の低さが求められるパートがある。
熊毛はあの後陽介から聞いた話だと、中学校の時、音楽の先生からオペラへの道を勧められた程、美声の持ち主らしい。高音域のパートを任せられるだろう。
そして、高校の時ヴォーカルをしていた種哉。
この5人が集まれば、すごいアカペラバンドが出来る!そんな構想が頭に産まれていた。
そしてついに、その5人が顔を合わせた。
「久しぶり!」
お互い皆、高校の同級生。高校の時親しかった人も、顔見知りだけであった人も、今ここに集った。
しかしここにいる全員が音楽が好きで、これからはアカペラをやるメンバー。
声だけで奏でる音楽:アカペラをやる仲間なのである。
俺とアカペラを繫ぐグループ『SongSpit』の初めての集い。
2007年2月18日日曜日
俺とアカペラ 第2章 ~始まり~
ボイパ ~口でドラムの音を出す~
:ボイスパーカッションの略。正式にはヴォーカルパーカッションと言う。
練習をして1ヶ月が経とうとしたころ、何となくコツというものをつかみ始めていた。
「普通の人間じゃ、出せない音が、自分の口から出る。」
もともと人と違う事をやるのが好きだった俺は、自分がテレビで見て引き込まれていた、その音を出せるようになったのが相当嬉しかったらしい。気付いた時にはボイパの楽しさにハマリ、夢中になっていた。新しい技ができた事が嬉しく、それをさらに上手くしようと思い練習を重ね、気付けば5時間が経っていたなんて事もある。
普通に生活をしていたらありえない、声を出しすぎての「首の筋肉痛」も味わった。音楽をしている友人に言わせると、
「低い声と高い声を交互に出すから、すごい負担になってんじゃない?」 らしい。
そう、そのときの俺は、もう何よりもボイパがやりたかった。
しかし、もともと俺がそれを始めるきっかけであった妹のアカペラバンド計画は、ただ単に流行に流されるがままの先走りのみで実際に実行には移されず、俺はただただひたすら一人で練習をするだけだった。
一通りの基本を覚え、実践で使えるように、つまりはアカペラバンドの一員として演奏ができるまでになった時も、俺は独りで、自分の技を磨くだけであった。
「一人だけでは・・・。」
そう、俺の技であり、この音は、もともとはバンドとしての音。楽器だけでの演奏には限界があるし、楽器ができる人は、ボーカルや、その他の楽器と合わせてみたいと思うのが当然だ。
ボイパだけでなく、他のパートと合わせてみたいという俺の思いは日に日に強くなり、同時に虚無感も増していった。
そんなある日、1通のメールが届いた。
高校からの大親友である「陽介」からのものであった。
こいつとは高校1年の時同じクラスで、一緒にバンドを組み「ツインボーカル」をしていたバンド仲間でもある。彼には一度飲み会の席でボイパを披露していた。まだまだ未熟極まりない時にやったものであったのだが、彼からのメールにはこう書かれていた。
「おいーす!ボイパの調子はどうだい?今度友達と、『ハモリ倶楽部』の出場を目指さないか?って話があるんだけど、どう?」
俺のアカペラへの道が始まる、大きな1通であった。
:ボイスパーカッションの略。正式にはヴォーカルパーカッションと言う。
練習をして1ヶ月が経とうとしたころ、何となくコツというものをつかみ始めていた。
「普通の人間じゃ、出せない音が、自分の口から出る。」
もともと人と違う事をやるのが好きだった俺は、自分がテレビで見て引き込まれていた、その音を出せるようになったのが相当嬉しかったらしい。気付いた時にはボイパの楽しさにハマリ、夢中になっていた。新しい技ができた事が嬉しく、それをさらに上手くしようと思い練習を重ね、気付けば5時間が経っていたなんて事もある。
普通に生活をしていたらありえない、声を出しすぎての「首の筋肉痛」も味わった。音楽をしている友人に言わせると、
「低い声と高い声を交互に出すから、すごい負担になってんじゃない?」 らしい。
そう、そのときの俺は、もう何よりもボイパがやりたかった。
しかし、もともと俺がそれを始めるきっかけであった妹のアカペラバンド計画は、ただ単に流行に流されるがままの先走りのみで実際に実行には移されず、俺はただただひたすら一人で練習をするだけだった。
一通りの基本を覚え、実践で使えるように、つまりはアカペラバンドの一員として演奏ができるまでになった時も、俺は独りで、自分の技を磨くだけであった。
「一人だけでは・・・。」
そう、俺の技であり、この音は、もともとはバンドとしての音。楽器だけでの演奏には限界があるし、楽器ができる人は、ボーカルや、その他の楽器と合わせてみたいと思うのが当然だ。
ボイパだけでなく、他のパートと合わせてみたいという俺の思いは日に日に強くなり、同時に虚無感も増していった。
そんなある日、1通のメールが届いた。
高校からの大親友である「陽介」からのものであった。
こいつとは高校1年の時同じクラスで、一緒にバンドを組み「ツインボーカル」をしていたバンド仲間でもある。彼には一度飲み会の席でボイパを披露していた。まだまだ未熟極まりない時にやったものであったのだが、彼からのメールにはこう書かれていた。
「おいーす!ボイパの調子はどうだい?今度友達と、『ハモリ倶楽部』の出場を目指さないか?って話があるんだけど、どう?」
俺のアカペラへの道が始まる、大きな1通であった。
2007年2月13日火曜日
俺とアカペラ 第1章 ~始まり~
2002年1月。俺には4コ下の妹がいるのだが、そいつが『ハモリ倶楽部』というテレビ番組にハマって、アカペラをやりたいと言出だした。アカペラとは、楽器を使わず声だけで演奏する音楽のジャンル。クラスの友達とそのアカペラをやると言うので、俺は遊び半分で「じゃぁ俺ボイパやりたい!」と 名乗り出た。
アカペラなんてのは、今でこそ人気が出ているが、ちょっと前まではほとんどの人が何それ?と言うものだった。。が・・・ 毎週水曜日ゴールデンタイムの人気番組『セイシュンGOGO!』のワンコーナーとして始まった『ハモリ倶楽部』が、今のアカペラブームを引き起こしている。
高校生や大学生が、アカペラバンドを組んでこの番組に出演し、全国学生NO1ハモリ倶楽部を決めるというもの。 まだ俺たちとおない年の奴らが、楽器を使わずバンドのような演奏をしてしまうのだから、これはすごい。
中でも、『ボイパ』と呼ばれる技を始めて見た時はビックリした。
~口でドラムの音を出す~
楽器を使わないアカペラだから、ドラムも当然声でやるというのだ。どんなものかと聞いてみると、これがほんとにドラムの音だからすごい。
そう、最初に見た時から、俺はそれに只ならぬ魅力を感じ、引き込まれていたのだろう。
番組で見ているのももちろん面白かったが、どうせなら俺は、せっかく妹が与えてくれた機会に、そのボイパに挑戦してみようと思ったのだ。
俺はすぐに妹が密かに買っていた『ハモリSTARTBOOK』という本を見て、ボイパを練習し始めた。
この時はまだ、それがこんなにも俺を熱中させるものになるなんて思いもしなかった。 そして、大学時代の素晴らしい仲間、ソングスピットとの出会いが待ち受けている事も。
アカペラなんてのは、今でこそ人気が出ているが、ちょっと前まではほとんどの人が何それ?と言うものだった。。が・・・ 毎週水曜日ゴールデンタイムの人気番組『セイシュンGOGO!』のワンコーナーとして始まった『ハモリ倶楽部』が、今のアカペラブームを引き起こしている。
高校生や大学生が、アカペラバンドを組んでこの番組に出演し、全国学生NO1ハモリ倶楽部を決めるというもの。 まだ俺たちとおない年の奴らが、楽器を使わずバンドのような演奏をしてしまうのだから、これはすごい。
中でも、『ボイパ』と呼ばれる技を始めて見た時はビックリした。
~口でドラムの音を出す~
楽器を使わないアカペラだから、ドラムも当然声でやるというのだ。どんなものかと聞いてみると、これがほんとにドラムの音だからすごい。
そう、最初に見た時から、俺はそれに只ならぬ魅力を感じ、引き込まれていたのだろう。
番組で見ているのももちろん面白かったが、どうせなら俺は、せっかく妹が与えてくれた機会に、そのボイパに挑戦してみようと思ったのだ。
俺はすぐに妹が密かに買っていた『ハモリSTARTBOOK』という本を見て、ボイパを練習し始めた。
この時はまだ、それがこんなにも俺を熱中させるものになるなんて思いもしなかった。 そして、大学時代の素晴らしい仲間、ソングスピットとの出会いが待ち受けている事も。
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