2008年1月21日月曜日

名もなき詩 ~前妻に捧げる純愛~


『君が好き』のような歌詞があるからこそ、この歌のような純愛の歌を聴くと感動せずにはいられません。
そしてこの歌の時代背景を考えると、純愛ラブソングを率直に歌えないにも関わらず、彼女への想いを必死に伝えた様子が分かり、より一層の感動を覚えます。
たぶんただなんとなく聞かれている歌詞だと思いますが、実はとびきりのラブソングなんです。

桜井さんの歌詞解釈をする上で最も大事な時代。
『深海』『BOLERO』の時代に出した『名もなき詩』です。

桜井さんが自分でやりたい音楽は、率直な愛情を伝える事でした。
それは『Everything』『KIND OF LOVE』などの時代のような歌です。

しかし、プロデューサー小林武史は「万人受けするように出来るだけダーゲットをしぼらない歌を作れ。」つまり解釈がたくさんできる歌を作りなさいと指示します。
『抱きしめたい』のような率直な歌は売れず、『CROSS ROAD』『Tomorrow never knows』が実際そうして売れちゃったもんだからミスチルもなくなく小林さんの言う事を聞いていきます。
・・・
そして桜井さんは自分の想うような歌が作れないもどかしさに心悩まされます。

この事は一部のファンには有名な話で、その歌詞が『深海』『BOLERO』にもそれが現れています。

<シーラカンス 君はまだ深い海の底で静かに生きてるの?>
「昔のような歌を作れる日はまだ、深い深い所で静かに生きてるの?希望を持ってもいいの・・・?
『シーラカンス』

<管理下の教室で 教科書を広げ 平均的をこよなく愛し>
レコード会社の管理の中で小林さんから売れる詩はこうだという歌詞を並べられ、平均的にこよなくうれる歌を作らされる。
『タイムマシーンに乗って』

『ALIVE』なんかをとっても、ミスチルの絶望が分かります。

そんな中桜井さんの支えだったのは当時の奥さん。
その彼女への想いを、率直に歌えないまま作ったのがこの歌です。
1996年2月発売という事でまだ吉野美佳さんとの関係はなかったと僕は考えます。


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『名もなき詩』 歌詞解釈
作詞・作曲 桜井和寿
1996年2月5日

<ちょっとぐらいの汚れ物ならば
残さずに全部食べてやる
Oh darlin 君は誰
真実を握りしめる>

君が作る料理はたとえちょっとくらいまずくても全部食べてやる。
ダーリンへ。君は世間の人から見れば「誰?」って人だけど
紛れもなく僕の真実の愛を受け取っている人なんだ。

<君が僕を疑っているのなら
この喉を切ってくれてやる
Oh darlin 僕はノータリン
大切な物をあげる>

仕事で忙しく家に帰れない日もあるけれど
僕のことを疑わなくていいんだよ。
ダーリンヘ。僕は馬鹿な奴だから
こうして分かり難い歌詞でしか大切な想いを伝えられない。

<苛立つような街並みに立ったって
感情さえもリアルに持てなくなりそうだけど>

君への歌を率直に表現したくてもできないもどかしい気持ちでスタジオに立ったって、
心を込めて歌うことができなくなりそうだけど・・・この歌は確かに君への想いを歌ってるんだよ。

<こんな不調和な生活の中で
たまに情緒不安定になるだろう?
でも darlin 共に悩んだり
生涯を君に捧ぐ>

僕は歌手で君は歌手の妻という不調和な生活だから
たまに不安になるんだろう?
でもダーリンよ、ついてきてくれ。そんな不安も共に悩んだりしよう。
そして僕は生涯を君に捧げることを誓う。

<あるがままの心で生きられぬ弱さを
誰かのせいにして過ごしてる
知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中で
もがいているなら
僕だってそうなんだ>

君への愛情をあるがまま歌えない事を、会社や小林さんのせいにして過ごしてる。
知らない間に築いている自分のプライドを社会のしがらみの中でもなんとか保とうとする。
僕も大好きなの人への率直な想いを分かり難くなってしまいながらも何とかこうして作っている。
(君への愛情を分かってくれ。僕の名もなき詩で。)



<どれほど分かり合える同志でも
孤独な夜はやってくるんだよ
Oh darlin このわだかまり
きっと消せはしないだろう>

(海外録音で世界を回る時は、)メンバーと一緒にいても
孤独な夜はやってくるんだよ。
ダーリンへ。このわだかまりは君と逢わないと消えないだろう。

<いろんな事を踏み台にしてきたけど
失くしちゃいけない物がやっと見つかった気がする>

今までたくさんの犠牲を払ってミスチルはここまで来た。僕自身も色んな女性とも付き合ってきた。
だけど一番大切なものがやっと見つかった気がする。

<君の仕草が滑稽なほど
優しい気持ちになれるんだよ
Oh darlin 夢物語
逢う度に聞かせてくれ>

仕草のかわいい君の事を想い出すと、やりたくない歌詞作製中でも、優しい気持ちになって浮かぶんだよ。
ダーリンへ。2人の豊かな夫婦生活を、また帰ったら過ごそう。

<愛はきっと奪うでも与えるでもなくて
気が付けばそこにある物
街の風に吹かれて唄いながら
妙なプライドは捨ててしまえばいい
そこからはじまるさ>

愛はきっと奪ったり、こちらばかりが好きだって想いを伝えるものでもなくて、
気がつけば引き合っていくっていうことだったんだね。
小林さんからの指摘されなくなく作った不本意な歌を歌いながら
(→君への愛を伝える率直な歌は歌えないけれど、)
そんなプライドは捨ててでも僕はとにかく歌ってみる。
そうしていればいつかは僕の歌が歌えるようになるって思うから。

<絶望、失望(Down)
何をくすぶってんだ
愛、自由、希望、夢(勇気)
足元をごらんよきっと転がってるさ>

絶望、失望をテーマにした歌ばかり歌ってるんじゃない。
愛、自由、希望、夢をテーマにした歌も、難しくない。すぐに出来上がるはずさ。

<成り行きまかせの恋におち
時には誰かを傷つけたとしても
その度心いためる様な時代じゃない
誰かを想いやりゃあだになり
自分の胸につきささる>

突然のヒット曲が出てその歌手にレコード会社は恋をする。
でもその1曲だけであってその後は見捨てられるという事が時にはある。
だけどそのシンガーに対していちいち心を痛めるような時代じゃない。
君の事を想って作る率直な歌は万人受けしないから売れないかもしれなくて、
最終的にその曲でこけたらミスチルは消えてしまうかもしれない。そんな思いが自分の頭によぎる。

<だけど
あるがままの心で生きようと願うから
人はまた傷ついてゆく
知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中で
もがいてるなら誰だってそう
僕だってそうなんだ>

それは分かってるけど、それでもありのまま君への想いを表現した率直な歌を歌いたいと心から願うんだ。
だから僕はまた小林さんからの万人受けする歌詞を作れという指摘に傷つくのだろう。
知らない間に築いている自分のプライドを社会のしがらみの中でもなんとか保とうとする。
誰だってそうだろう。僕も大好きなの人への率直な想いを分かり難くなってしまいながらも何とかこうして作っている。
(君への愛情を分かってくれ。僕の名もなき詩で。)

<愛情ってゆう形のないもの
伝えるのはいつも困難だね
だから darlin この「名もなき詩」を
いつまでも君に捧ぐ>

愛情を伝えるのはいつも困難だね。
だからねダーリン。率直な歌が歌えないならせめてこの「名前も付けれないような君に捧げる詩」を
いつまでも君に送るよ。



そしてこの詩は、全国の人々の胸に響き、オリコン歴代1位となる初動売上120.8枚という快挙を成し遂げた。

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