2008年1月19日土曜日

それでも僕はやってない ~これでもかという製作者の想いを見よ~

『それでも僕はやってない』 ~これでもかという製作者の想いを見よ~ (2007年1月)

総合 64点
(ストーリー:内容;8点/30点
      一貫性;20点/20点
       展開;5点/20点
主張:10点/10点
描写:15点/10点
演技:6点/10点)

周防正行監督による、『Shall We ダンス?』以来10年ぶりの映画でオリジナル作品だ。
本作は主人公の金子徹平が痴漢疑惑をかけられた場面から、裁判終了までを終始ドキュメント調に描かれている。大学で法律を学んだ私としては作品自 体の内容もそこそこ面白かったのではあるが、映画というジャンルで考えた時、このような痴漢冤罪ドキュメントをわざわざ2時間も見る必要はない。と感じ る。ストーリー性に面白みもなく、この手の作品にしてはサスペンス性やヒューマンドラマ、感動もない。ただ延々とその様子を描いているという内容だから だ。
しかし、である。「これこそが現在の刑事裁判の現状であり、冤罪を産む実態なのである。」という事を表現しきった製作者の想いはすごい。私が考 えた採点配分でなのではあるが、今回は描写で満点以上つけた。理由はそこである。毎回満点以上をつけるものと思わないで欲しい。この作品はそれだけすごい という事だ。敢えてハッピーエンドにさせなかったり、ヒューマンドラマを混ぜなかったりした内容は、その想いを伝えたかった故なのだろう。こういったス トーリーを無視してまでも冤罪という罰せられない罪を表現しきったこの作品は、人々の胸に届く事は間違いない。法曹、これから司法に携わる人が見ることは 必須といっても過言でない。冤罪を受ける人の留置所での様子や公判の様子も実にリアルである。弁護士と検事が言い争うような裁判ドラマにした方が面白くな りそうなものだが、敢えてそうしないおかげで、本物の裁判の様子が事が実に良く伝わってくる。ドキュメントとしての描き方も起承転結が見事にきれいであ り、矛盾点がまるでない。この描写のおかげで視聴者は製作者の描いた想いが痛いほど良く分かったはずである。
演技に関しては今回はあまり触れない。最低限の事ができているので、上記した想いを壊さなければ問題ないと考える。役所広司は抜群に良い。山本耕史はかっこよすぎるが故のキャストミスのように感じた。
この映画の製作者の想いを是非観て欲しい。自分の伝えたいことを真摯に描くというこれこそが映画の本質なのである。見る人の期待に添えない結果になってしまってもいいじゃぁないか。

0 件のコメント: