2007年2月20日火曜日

俺とアカペラ 第3章 ~誕生~

陽介からのメールは、これからは仲間と一緒にボイパができるという喜びを運んできた。
そして、これが俺のアカペラへの道が開ける最初の一歩であったのだ。

しかし陽介の言う、友達とは・・・?
メールの続きを細かく読んで見ると、そこには3人の名前が記されていた。
「熊毛(くまげ)」と「ウッズ」、そして「種哉(たねや)」である。
3人とも、俺と陽介の出身校である「一宮高校」の卒業生であった。

熊毛は、本名:熊毛良一。高校の頃、陽介と同じハンドボール部に所属していた体格の良い「歌好き」である。陽介と仲が良かった俺は、ハンドボール部の同年代は皆知っていて、話ももちろんした事があった。
ウッズとは、1年生の時同じクラス、つまりは俺と陽介のクラスメイトで、容姿があの有名なプロゴルファー「タイガー・ウッズ」に似ていることからあだ名として皆そう呼んでいる。言っておくが生粋の日本人で、本名は西洋のかけらもない:澤田義男という。
そして種哉、本名:綾瀬種哉もまた高校の同級生。だが、正直彼とはあまり面識がなく、体育の合同授業の時、少し話したくらいの関係だった。俺たちとは別のバンドを組んでいたらしく、彼はそこでヴォーカルをやっていた・・・らしい。そう、後に必要不可欠となるこいつの声を、この時の俺はまだ知らなかったのである。

熊毛、ウッズ、種哉、それに俺と陽介。 合わせて5人。
アカペラをやるのには充分な人数。
その5人が集まる最初の日がやってきた。
場所は、地元の公民館。俺は集合時間の少し前に来ていた。
そして、ワクワクと想像を膨らませていた。

陽介は、小学校の時からハモリの練習をしていて、バンドを組んでいた時もハモリに関して、音感に関して、俺もかなりの指導を受けた。ハモリはこれから俺たちが奏でるアカペラの根本。指導者として引っ張っていってくれるだろう。
ウッズ。その容姿と明るい性格でクラスでも人気者であった彼は、地声もやたらと低く、特徴的であった。アカペラにはベースという声の低さが求められるパートがある。
熊毛はあの後陽介から聞いた話だと、中学校の時、音楽の先生からオペラへの道を勧められた程、美声の持ち主らしい。高音域のパートを任せられるだろう。
そして、高校の時ヴォーカルをしていた種哉。
この5人が集まれば、すごいアカペラバンドが出来る!そんな構想が頭に産まれていた。

そしてついに、その5人が顔を合わせた。
「久しぶり!」
お互い皆、高校の同級生。高校の時親しかった人も、顔見知りだけであった人も、今ここに集った。
しかしここにいる全員が音楽が好きで、これからはアカペラをやるメンバー。
声だけで奏でる音楽:アカペラをやる仲間なのである。

俺とアカペラを繫ぐグループ『SongSpit』の初めての集い。

0 件のコメント: