2007年9月4日火曜日

犬神家の一族 ~温故知新~

『犬神家の一族』 ~温故知新~ (06年12月)
総合60点/100点
(ストーリー:内容;11点/30点
       一貫性;19点/20点
       展開;10点/20点
主張:5点/10点
描写:6点/10点
演技:9点/10点)

日本映画史上最高のミステリーと称される犬神家の一族がリメイクされた。角川ホラー30周年記念作品でもあり、監督も主演も30年前と同じキャス トであるらしいが、私にとってはこれが初めて見る犬神家の一族であり、過去作品の比較への評価ができないのはご了承頂きたい。ちなみに日本の名探偵金田一 耕助の話を見たのも初めてであった。
ということでこういった作品は私のような現代っ子が評論すべきでないのかもしれない。横溝正史というと奇抜なトリックと予想もつかない話展開と 聞いてはいたけれどトリックも話展開も現代ミステリーの方が面白いように思った。もちろん、横溝先生の発想があったからこそ、それが現代のミステリーに活 かされているのであると思うが、見る順番が逆なのだからしょうがない。一番のがっかりは、ミステリーで一番のクライマックスである真相部分。綺麗にまと まってはいるが、逆転につぐ逆転という派手さがない。佐清の正体が明かされるのも、真相以前に分かってしまっているのでクライマックスでの盛り上がりも、 答えが分かっている解答合わせのようである。謎解きができないミステリーには、現代っ子の僕らとしてはやはり残念なように思う。全体的な起承転結が非常に きれいにまとまっているだけに、せめてもう1転する展開は欲しかった。
ミステリー映画としての恐怖感もイマイチ表現に長けない。ここは敢えてホラー映画が嫌いな人にも見れるようにとの配慮なのかもしれないが、ミステリーファンとしてはものたりないと言った所だろう。
 しかし、主演の石坂浩二を初めとする俳優・女優人は豪華キャストなだけあって出来が非常に良いし昭和20年という時代感もかなり上手く描かれている。先にも書いたがストーリーの起承転結はしっかりしているので見ていて非常に気持ちが良い。
こういった意味でこの犬神家の一族は、古きを知り新しきを知る作品ということではないだろうか。新作落語ばかり見ていた人も時には古典落語を見て みるのは良いだろう。現代小説ばかり見ている人も、たまには夏目漱石を読み返すのも良いだろう。もちろんもともと古典が好きな方には、大満足間違いなしな のである。これだけの月日が流れても愛される作品になる。そんなモノを、これからは現代の僕らが後世のために作っていかなくてはならないのである。

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