2007年9月12日水曜日

手紙 ~起承転結が汚い作品の典型~

『手紙』 ~起承転結が汚い作品の典型~ (06年11月)
総合35点/100点
(ストーリー:内容;12点/30点
       一貫性;4点/20点
       展開;8点/20点
主張:0点/10点
描写:6点/10点
演技:5点/10点)

大人気作家:東野圭吾さん原作の映画第4弾。私はあまり小説を読まないのだが、東野さんの作品に関しては好きで、読んでいる。リアルで鋭い人物描写や話の内容はすごい。こういう人が賞をとるのだろうなぁといつも感動を覚えるものだ。
しかし残念ながらこの映画に関しての見所はほぼないに等しい。原作で最も大切な「兄との絶縁」の部分がおろそかに描かれすぎで、下手に兄弟愛に走 りすぎたせいか何が言いたいのかさっぱりと分からず、その上感動もできない。これでは東野圭吾さんのせっかくの主張も何も伝わらない。私は「いかに原作通 りに描くか」ということには拘らず、映画は別に原作とかけ離れて作っても良いという考えだ。だから兄弟愛に走ったということを悪く言っている訳ではないの だが、それならばもっと兄弟愛としての物語構成にすれば良かったし、原作にアレンジを加え違う作品にしたって良かったとさえ思う。(東野さんの了解を得 て。)
視聴者が喜びそうな感動作品に仕上げようとしたはいいが、ある程度原作通りのストーリー展開を守る。しかし全くそれ通りにはいかず途切れ途切れ の話展開。こういう映画は起承転結が汚い作品の典型で、結局は「何が言いたいの?」ということになってしまう。原作で描きたかったことと、この映画で描き たいことの違いがあるのであればそもそもその隙間を埋めることはかなり難しいのである。原作通りを守るか、変えてしまうかを決めないでどっちつかずになる のが一番いけない。話の起承転結が崩れると何がなんだか分からなくなってしまうのである。特にこの作品のようにクライマックスでの大きな部分の筋道をそら してしまうというのは、見ている側としてはキョトンとなる他ない。いくら俳優さんが良い演技をしても、ぐっとくるような演出をしても、これでは台無しだ。
結局この映画の見所は相変わらず素晴らしい演技を見せる主演の山田孝之だけであろう。今回はお笑いコンビとしての演目までこなす訳だが、芸人と しての間も結構上手くて普通に笑えるネタもあった。沢尻エリカの下手な関西弁さえなければ演技で10点をつけてもいい。それだけ山田孝之の演技は素晴らし い。原作ではお笑いコンビという設定ではなく、ストーリーとしては甚だ疑問なのだが、山田孝之だけ見るとしては思い切って設定を変えて良かったのではない かと思う。

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